サイドバルブ初心者講座”サイドバルブのエンジンのかけ方”

既に時代遅れのOHVエンジンを未だに搭載している事で有名なハーレーダビッドソンですが、OHVエンジンよりも原始的なサイドバルブエンジン(SV)を搭載した車両がありました。

サイドバルブエンジンはその名の通り、バルブがシリンダーの横に配置されており、シリンダーヘッドはただの蓋で、平らである事からフラットヘッドとも呼ばれます。

ハーレーのフラットヘッドと言えばULやULHが有名ですが、45cin(750cc)の排気量のWLやサービカーのGも有名です。これらはビッグツインに対して、ベビーツインと呼ばれます。

このベビーツインは第二次世界大戦中に、連合国軍用に大量生産されましたので70年経った今でも、比較的沢山残っています。

ビッグツインより手頃で、しかしながら旧車テイストバリバリの車両です。



今回はそんなサイドバルブの基本的な事について紹介したいと思います。


例として使用するのはこの車両です。
マグネトー点火仕様にカスタムされていますが、基本的には同じです。
IMG_4584.jpg



サイドバルブはバイクとしての基本操作が現代の一般的なバイクとは全く違います。
その為、興味はあるけども、いざ自分が所有するとなると抵抗がある方もおられると思います。

しかし、慣れてしまえば対した事はありません。
むしろ、その操作を楽しむ事ができます。

現代のバイクのほとんどは左手のレバーでクラッチを切り、左足のペダルでシフトチェンジする、”フットシフト・ハンドクラッチ”方式ですが、
このサイドバルブは、左足のペダルでクラッチを切り、タンクの横についているシフトレバーでシフトチェンジする、”フットクラッチ・ハンドシフト”方式です。


それでは、ハンドル周りを見てみましょう。
IMG_4581_2014060116055403c.jpg


まず、ハンドルの右側ですが、これは普通のバイクと同じでアクセルスロットルです。
グリップをまわすとスピードが上がったり下がったりしますね。
ただし、普通のバイクのようにグリップを離してもグリップが元の位置へ勝手に戻ったりはしません。
戻すのも手動。
その為、このバイクでは両手離しでの走行が可能です。

左側のグリップも同じように回るようになっています。
こちらはタイマーアジャスタースロットルで、”イグニッションタイマー”と呼ばれる部品を動かす為のグリップです。



ガソリンエンジンはシリンダー内でガソリンを爆発させるきっかけとしてスパークプラグが使用されます。
点火したプラグからシリンダーの中で燃焼が順々に広がって行きます。
(ちなみに、”燃焼”のスピードがある速さ以上になると”爆発”と呼びます。)

ガソリンエンジンは通常、ピストンが圧縮上死点に達した時に効率よく燃焼を得られるように、ピストンが圧縮上死点に達する少し手前でプラグに点火するようになっています。
エンジンの回転速度が上がってくると、ピストンの移動スピードが上がるので、さらに早いタイミングで点火しないと燃焼が間に合いません。
そこで、エンジンのスピードに合わせて点火タイミングを速くしたり遅くしたりするのが”進角装置(イグニッションタイマー)”です。

大半のバイクはこの進角を電子回路で行っています。
遠心力を利用した機械式のものもありますが、”旧車”と呼ばれるものにしか見られません。

で、このサイドバルブは手動進角です。

エンジンの回転速度に合わせて自分で点火タイミングを調整しながら走ります。
左側のグリップはその為のものです。

難しく感じる方は、アイドリング時は戻して、走行時は全開でも問題ありません。
アクセルと同じ動きをさせてもいいです。
長く乗っていると、エンジン音や振動などで最適な点火タイミングがどれくらいかわかってくるようになりますので、調整しながら走るとさらに調子よく走ります。



タンクは分割式になっています。
左側がガソリンタンク、右側がオイルタンクです。
オイルは基本的にシングルグレードの#50を使用します。



次にクラッチを見てみます。
IMG_4580.jpg


クラッチはシーソーペダルになっていて、手前を踏み込むとクラッチが切れた状態、前側を踏み込むとクラッチが繋がった状態になります。
IMG_4579.jpg


エンジンをかけるときはギアをニュートラルに入れ、クラッチが繋がった状態で行います。

ちなみに、
現行バイクでの坂道発進をする場合、右足で後輪ブレーキをかけながら、ギアを1速に入れ、右手でアクセルを煽りながら左手のクラッチレバーを徐々に離して行き発進すると思いますが、
このバイクは、左足でクラッチ操作をしないと行けませんので、右足でブレーキをかけておく事ができません(とても難しい)
その為、坂道発進ではフロントブレーキを使用するのですが、ハンドル右側についていたのでは、右手だけでアクセルとブレーキ操作を同時にしないと行けなくなりますので、
フロントブレーキのレバーはハンドルの左側についています。





それでは、エンジンのかけ方についてです。


はじめに、
ペットコック(ガソリンコック)を開け、キャブレターにガソリンが流れ込むまで待ちます(約10秒)。ガソリンが流れていないとエンジンはかかりません。(当たり前です。)

エンジンを始動させずに長く放置していた場合、ペットコックを開けてしばらくするとキャブレターからガソリンが漏れてくる事があります。(オーバーフロー状態)
これはキャブレターのフロートバルブが適切に働いていない為です。
こんなときはドライバーの柄など少し柔らかいものでフロートボール(キャブレターの下側の丸い部分)をコンコンと叩いてみます。
軽いフロートのスタックによるオーバーフローだと、これで正常に作動し、オーバフローが止まります。
これでもオーバーフローが止まらない場合は、キャブレターの分解清掃が必要です。


ガソリンがキャブレターに行き渡ったところで、


・ギアはニュートラル
・クラッチはON(前側が下がっている状態)
・メインスイッチはOFF(この車両はマグネトーのキーがOFF)
・アクセルは戻した状態
・キャブレターのチョークプレートは全閉


にします。

IMG_4576.jpg
チョークプレートが全閉の状態



この状態でキックを3回くらいします。
これは、キャブレターのフロートボウルからガソリンをある程度吸い出しておく為です。
こうしてエンジンがかかり易いようにガスを濃くしておきます。



次に、

ハンドル左のタイマースロットルを全閉と全開の中間辺りにします。(タイマーが動く範囲の中間。この車両ではマグネトーが動く範囲の中間)
キャブレターのチョークプレートも半開きにします。

IMG_4577.jpg



ここで初めてメインスイッチをONにします。
(この車両はマグネトー仕様なのでマグネトーのキーをONにします)
IMG_4582.jpg


キーをONにしたらアクセルスロットルを少し開き、キックするとエンジンはかかります。

うまくかからないときは②から何度かやってみます。
3回くらいやってもかからないときは①からやり直します。

何度も失敗して①からを繰り返していると、シリンダー内に未燃焼ガスが充満して、プラグが湿ってしまい余計にかかり難くなる事もあります。

何度も失敗してしまったときは、

・キーをOFFにして
・アクセル全開
・チョークプレートも全開


この状態でキックを10回くらいします。
これはシリンダー内の充満した未燃焼ガスを一旦外に吐き出し、フレッシュな空気と入れ替えるとともに、湿ってしまったプラグを乾かす目的です。

そして、膝の屈伸を10回くらいします。
これは、休憩と気持ちを入れ替える為です(笑)

IMG_4578.jpg




屈伸が終わったら①からやり直します。


これでもかからない場合は、何か問題があるかも知れないので知識を持った人に相談してください。


エンジンがかかったらエンジンが暖まるのを待ちます。
エンジンが暖まったらチョークプレートを全開にします。

エンジンの音を聞きながら、タイマーを動かしたり、アクセルを動かしたりしてみましょう。





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マグネトー

初めましてコウと申します。
いきなりの質問ですみません。
久しぶりにサイドバルブのエンジンを掛けようとしたら、全くかからなく、プラグに火が飛んでないみたいなのです。
仕様はWICOのマグネトーです。
プラグを外しエンジンにあて、キックしても火が飛んでません。
手順的にどこから、探れば良いでしょうか?

Re:マグネトー

コウさん初めまして。
久しぶりに掛ける前は正常に動いていたのでしょうか?故障して放置していたのでしょうか?
動いていた物をしばらくぶりにエンジンを掛けようとした時に掛からなかった、という場合は先ずは「ずっこけポイント」を疑います。
「ずっこけポイント」とは結果が分かれば

_(┐「ε:)_ズコー

となるところです。
例えば、

・メインスイッチ(マグネトーのキルスイッチ)がOFFになっている。
・プラグキャップがきちんと奥まで刺さっていない(プラグ側とマグネトー側)

などです。要するに、故障を疑うのではなく、自分を疑うのが基本です。

また、火花が飛んでいるかどうかを調べるときはダミープラグを使用してください。
シリンダーにプラグをあてるやり方では導通が不十分な事もありますし、キックし難くてキックが弱く火花が発生していない事もあります。

ダミープラグとは?下記ページ参照。
http://www.backon.jp/HowToDoIt/pg169.html

「ずっこけ」OKの場合はやっと故障を疑います。

私の場合は、
①プラグコード(抵抗を調べます)
②ポイントギャップ
③ポイントの摩耗、錆、くすみの状態(くすんでいたり錆びている場合は1000番以上の細かいサンドペーパーなので磨きます。)
④アース不良(常にキル状態になっている)
⑤コンデンサの故障
⑥コイルの故障

の順番で探って行きます。
 

マグネトー

お返事ありがとうございます。
大変勉強になります。

その手順をおってみます。

それとWICOのXV1922のマグネトーのコンデンサーはどちらで購入出来るかご存知ですか?
他のマグネトーのコンデンサーが使えるのでしょうか?

Re:マグネトー

海外にはWICOマグネトーを専門に扱っているショップもありますので、コンデンサーはそちらからも購入できます。
また、大きさ(と長さ)や取り付け用のネジ穴の位置があえば他のマグネトーのコンデンサーも使えます。
ショベルなどのポイント点火用のコンデンサーの中には少し長めのロングタイプも存在しますのでご注意ください。これは収まりません。

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④アース不良(常にキル状態になっている)

こんばんは、初めましてksと申します。
拝見させて頂き私のサイドバルブWLのマグネトーの症状についてアドバイスを頂きたく、すみませんが書き込みさせて頂きます。マグネトーを購入しエンジンに取り付けたところプラグからは火花が出ず困っています...。マグネトー単体でのテストでは元気良く火花が出ます。ダミープラグにしてテストをすると全く火花が出ません。キルスイッチ取り付け箇所は完全に絶縁すべく樹脂のパイプをゴムチューブに替えて絶縁対策にと行いましたが一向に火花が出ません...。お手数お掛けしますが教えて頂けましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

Re:アース不良(常にキル状態になっている)?

ksさん、初めまして。
マグネトー単体でのテストでは火花が飛んでいるということはプラグコードかプラグに問題があるのではないでしょうか?
まずは、マグネトーを車体から外し、プラグコードの導通、マグネトーとプラグコードの接点不良がないか、を新品のプラグで試してみてください。
そこで、プラグに火が飛んでいるのに車体に取り付けると火が飛ばない場合はアースに問題があると思います。
マグネトーはボディアースですので、内部短絡かもしれません。

Re:アース不良(常にキル状態になっている)?

爆音モータース様
早々にお答え頂き誠にありがとうございます。
私の説明不足ですみません...。
エンジンからマグネトーを外してテストした際はコイルのスプリングの火花の確認とカバー取付をしてプラグコードとプラグを取り付けて確認をして元気良く火花が出るのを確認をしてマグネトーをエンジンに取り付けました。
しかしエンジンにマグネトーを取り付けてキック始動しますしますとプラグからは火花が出ませんでした...。
プラグをダミープラグにしてテストをすると全く火花が出ませんでした...。
このような状態ですとアースの問題になりますでしょうか?
コイルとコンデンサーを交換しましたので取り付け方の間違いでしょうか?
短絡で疑える箇所など教えて頂けましたら幸いです。
お忙しい中を申し訳ございません、お手数お掛けしますが教えて頂けましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

Re:アース不良(常にキル状態になっている)?

ksさん
症状から見るとやはりアース不良な気がします。
旧車ハーレーやマグネトーのような同爆点火式の場合、2つのコイルがつながった状態で初めて1つのサーキットとして成立しなければなりません。
通常エンジンに取り付けられている場合はエンジンブロックを通じてプラグ同士がつながった状態となって1つのサーキットになっています。ダミープラグはこれを簡単にしたもので、マグネトーを車体から外した状態でダミープラグを接続し、点火しなければいけません。
よろしければ写真などを(特に配線接続部分のよくわかる写真)送っていただけますと接続が正しくできているか確認します。
ご自身で確認される場合は、アース端子がマグネトーのボディに直接当たってないか確認してください。

キーシリンダー配線

初めまして。フェアバンクスのマグネトーにキーシリンダーを装着してみたのですが、ONでもOFFでも火が飛んでしまう状態に悩んでいます。配線が間違っているように思うのですが、正しい配線の仕方をご教示いただけないでしょうか。お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。

Re:キーシリンダー配線

ユウリさん
現在どのような配線になっているか絵に書いて直接メールしていただけますか?
info@backon.jp
まで。
プロフィール

爆音さん

Author:爆音さん
整備やカスタムについて共有しましょう。
現在行っているものや、整備学校時代に撮った写真を使って記事を書きたいと思います。
ハーレーに限らず、バイクを分解整備する時に是非使って頂きたいのが、適切な工具とメーカー発行のサービスマニュアルです。
マニュアルには分解手順、注意点、締め付けトルク、組み立て手順が記されています。
特に、ハーレーのマニュアルはその順序が事細かにかかれていると思います。しかし、日本語のサービスマニュアルがあまり出回っていないのも事実。
ほんの少し、分解整備の手伝いになればと思います。
分解整備は個人の責任に於いて行ってください。

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